(前略)
新しい世紀を迎えて、世界各地でおこるもろもろの災害や、異常気象、飢餓、難民などの心配される現象が、次々現れてくるのを見るにつけ、ご神諭に「人民三分になる」とご警告された開祖さま(出口なお大本開祖)のみ教えが、今日ほど心にしみて、尊く感ぜられる時はないのではないでしょうか。
明治25年、開祖さまが、神がかり状態になられたのを聞いて、三女の福島久子さん親子が見舞いに行かれますと、開祖さまは「何も土産にやるものがない」といって、庭より板きれにのせた、一塊(ひとかたまり)の土をもってきて差し出されました。久子さんはあきれて「土みたいなものを」と言われますと、開祖さまは「土みたいなものじゃない。お土があるから皆が生きていられるのじゃ。百万円の金よりも一握りのお土の方が、どれだけ大切かわからぬ。これがわかってきたら、この世がみろくの世になる」とお諭しになられています。
この清らかな大地に生を享(う)けた私たちは、日々、天地のお恵みに感謝をし、「月日と土の恩を知れ」との、み教えをしっかりとお腹に入れ、食、農、環境など、身近なところから、それぞれのできるご用にお仕えさせていただきたいと存じます。
また、開祖さまのご晩年、聖師さま(出口王仁三郎大本教祖)は、次第に拡張され、美しくなっていく神苑の状況をご覧になっていただきたいと、開祖さまを背負われ、苑内を巡覧されました。開祖さまは、何度も喜びの言葉をくり返され、その労をねぎらわれたそうですが、後で側近にしみじみと「神苑が広くなり、建物が増してゆくことはまことに結構なことですが、それよりも一人でも誠の者ができたら、どんなにかこの胸の中が楽になるのだが」と深く感慨をもらされたと、伺っています。
ご神諭に「燈火(ともしび)の消ゆる世の中今なるぞ、差し添え致す種ぞ恋しき」と示されていますが、私たち一人一人がさしそえの種となり、まことの人とならせていただくことを、今、神さまは迫られ、急いでおられるのではないかと思います。
昨今の世相は、米国同時多発テロ事件に端を発し、報復、怨念の悪夢がはびこり、今までに経験したことのない恐ろしい戦争や、飢餓が、世界に広がる危険をはらんでおります。開祖さまが、生涯を貫いて「大難を小難に、小難を無難に」と万民救済、世界平和を祈られたご精神に立ちかえり、争いのない、万物の生命輝く新しい世紀の実現に向けて、み教えを世に広め、人類愛善会、愛善みずほ会、楽天社、社会福祉の諸活動を盛んにし、世の人々と手を携えて「善の鑑(かがみ)」を出させていただきたいと強く念願しております。
(後略)
(H13・11・6「大本開祖大祭」ご挨拶より)
本日は、全国各地より大勢の皆さま方がご参拝くださいまして、二代教主さま(愛善みずほ会初代総裁)五十年祭を清々しくお仕えさせていただきましたこと、まことにありがたく、心より厚く御礼申し上げます。
昭和27年3月31日、二代教主さまのご昇天に際し、
道のべに桜うつくしくちりしけり吾が母上は死にたまひけり
と、三代教主さま(愛善みずほ会二代総裁)は、追悼の歌をお詠みになりました。
今年も、桜の美しい季節がめぐりきて、ご昇天より、はや50年の歳月が流れました。
身にあまる苦しみや、艱難の日々をつよく生き抜かれ、「大地の母」として、慈母のごとく慕われた二代教主さまのご生涯をお偲び申し上げますとき、散りゆく桜のなか、最も頼りにする方を見送られた三代教主さまの思いとも重なり、熱いものがこみあげてまいります。
残念ながら私は、二代教主さまのご在世中には、まだこの世に生を享けておらず、その温容に接することができませんでしたが、このあと、皆さまに上映させていただくビデオを、過日観せていただき、在りし日の二代教主さまの偉大なご風格を拝し、初めて耳にするお声に、お話に、新たな感動を覚えました。
三代教主さまは、二代教主さまのご生涯を、『私の手帖』の中で、
「母は、大本開祖の末子(ばっし)に生れ、幼少の頃から、ひどい生活苦を体験し、激しかった開祖の御神懸(ごかんが)かりに仕え、18才の時に父と結婚して70余年の生涯をおえるまで、けわしい創生・生成期の大本の道の要となって歩んできた人であります。
女性の身にあまる艱苦や、法難のさなかを健気(けなげ)に生き抜いて来た母には、まことに強靱そのものの信仰が宿っていました。その一面、ゆたかな詩情をもやしている人で、少しも苦労ずれの翳(かげ)のない明るい人でありました」
と語られています。
私は、開祖さま、聖師さまとともに、大本創生(おおもとのはじまり)の歴史を歩まれ、救世の神業の基礎を築かれる「要(かなめ)のご用」を全うされた、二代教主さまの遺された尊いみ教えを践み行い、より良い教風を高め、大本万代の基礎を固めるご用に、これからも皆さまとともに励ましていただきたいと思います。
二代教主さまは、一人でも多く世人を救う「あれでならこそ」といわれる誠の信仰をお説きになり、大地のご恩と、感謝に満ちた喜びの生活の実践、万教同根に根ざした一つの世界実現のご用を、くりかえし強調されました。
みづはだいちのそこよりいづる
つちはふまれてしらぬかほ
たんかけられてもしらぬかほ
こめうみ、むぎうみ、いもかぼちゃ
いっさいがっさいうみいかし
それによびとのしたにある
かなめのかみのちゅういする
これは、晩年、二代教主さまがお示しになったものと伺っていますが、大地の金神、金勝要(きんかつかね)の大神さまの人類に対する警告として、厳粛に受け止めさせていただかなければならないと思います。二代教主さまは、戦後日本の荒廃した国土を憂いられて、多彩な諸活動を展開されました。
「三千世界一度に開く梅の花」のご神業に、全信徒が参加奉仕し、誠の道を世に広め、人類愛善会、愛善みずほ会、大本楽天社、愛善エスペラント会、社会福祉事業など、あたかも五弁の梅の花がひらくかのように、先端をきって運動を全世界に広めようとされました。21世紀を迎えて、今日世界は、神さまのお示しくださいました、三千世界の立替え立直しの正念場におかれているごとき世相を呈しています。
人類の母とも仰がれた二代教主さまのみ心にそって、ご神業が一層進展いたしますように、全信徒が和合してともに、みろくの世へのご用に励ましていただきましょう。
それでは、聖地の春を十分にお楽しみいただき、ご神徳をいっぱい頂かれ、気をつけてお帰りくださいませ。本日は、ご多忙の中、ご参拝いただきまして、まことにありがとうございました。
(H14・3・31「二代教主五十年祭」ご挨拶より)
愛善の心で農作物をお作りくださっている皆様、明けましておめでとうございます。お蔭様で、私も畑を始めさせていただいてから4年目の春を迎えました。愛善みずほ会会長島本邦彦先生のご指導のもと、多くの皆様のお力添えをいただき、昨年(平成17年)は、愛善酵素農法認定36号を頂戴いたしました。
日本の国に農業のよい型を出そうと思い、はじめは自分ひとりで耕せる程の小さな畑をと考えていたのですが、だんだんと野菜の種類が増え、畑の範囲が広がり、とてもひとりでは手におえないほどの大きな畑になってまいりました。そのお蔭で、お土からいただいた様々な種類の野菜を、両聖地の大祭や、月次祭などにお供えし、皆様にもお分けすることができ、季節ごとに本物の味を楽しむ幸せをも感じさせていただいています。今年はカボチャ、ソラマメ、トマト、シシトウ、ピーマン、サトイモ、ショウガなどがたくさん収穫できました。
私の畑は、周りに樹木が多いため日当たりや風通しが悪く、決して条件が良いとは言えませんが、作物によっては専門家の方が驚かれるほど立派に成るものがあります。愛善酵素農法をはじめてより、年々お土がやわらかく、細かく、よいにおいがするようになってまいりました。そして、この土地の環境に合う野菜と合わない野菜があること、また種類により植える時期を考えなければならないものもわかり、多くのことを学ばせていただいています。
昨年日本列島は、高温少雨の天候でしたが、一部を除き、おおむね例年並以上の豊作をいただき、農作物も良好、果物も全体に甘くて美味しい物が多かったことは大変有難いことでございました。
しかし、海外では大きな災害が相次ぎ、日本周辺の海では巨大越前くらげが異常発生して漁業に悪影響をあたえているごとく、陸でも環境悪化による生態系の破壊や、異常気象など、今後の農業、林業、漁業を考えるとき、不安な材料がいっぱいあります。
日本の食糧自給率は40%、穀物自給率でいう28%と低く、私たちの食べ物を作っている畑の70%が海外にあるといわれています。そして、日本は食べ残しを捨てる量が世界一で、その量は世界の食料援助量の2倍以上となっており、一方で食糧不足のため、飢餓に苦しむ人が多いという事実を思うと、日本人として、なんとももったいない不名誉なことだと恥ずかしくなってまいります。
愛善みずほ会は、発会以来58年、お土の心を大切に、天産物自給自足による土づくりを根幹とした農業普及に力を入れてまいりましたが、今後日本の将来のため、この考え方や技術をさらに広く、より早く普及し、農業が国の大本として尊重される社会をとりもどしていくことが大切だと思います。
本年も皆様と共に、天地のお恵みを豊かにいただけますよう、安全で美味しい作物をつくり、みずほの国の宝とならせていただくことができますよう、精一杯励ませていただきたいと存じます。
(「みづほ日本」誌・H18年1月号より)
(前略)
節分大祭では、あわせて今年一年の豊作を祈る豊年祈願祭が行われます。本日2月3日は大地の金神 金勝要(きんかつかね)の神と仰ぐ二代教主さま(愛善みずほ会初代総裁)がお生まれになった尊い日でもあり、明日2月4日は昭和23年に二代教主さまが初代総裁をつとめられ、自ら先頭に立ってご指導されました「愛善みずほ会」が創立して満60年の還暦を迎えます。
ご神諭に
「大地の金神様を金勝金(きんかつかね)の神様と申すぞよ。今度 艮(うしとら)の金神が表に成るに付いて、此(こ)の神様を陸地表面(あげ)へお上げ申して、結構に御祭り申さな斯(こ)の世は治まらんぞよ」
とありますように、二代教主さまの大地の金神金勝要の神としての、世界救済のお働きは私たちの想像以上に底知れぬものがございます。
この60年の間に、私たちをとりまく環境は悪化の一途をたどり、農業のあり方や食の安全、水不足、食糧危機などが大きな問題となり、大地の金神さまの深いお嘆きが伝わってくるようでございます。今、この節目の年にあたって、私たちには「愛善みずほ会」の創立の理念に立ち返り、天産自給や信農一如、天地への報恩感謝など、大本のみ教えに照らして食、農、環境の問題を根本から学び、現在の生活を見直すことが大きく求められています。
現代において危機的な社会現象を引き起こしている人の心の乱れや精神・神経の病、またアレルギーやその他原因不明の難病などの増加は、乱開発がもたらした地球環境破壊や化学物質乱用による土、水、大気の汚染、農薬や食品添加物、その他もろもろの経路により汚染された食品、さらに、乱れた食生活をはじめとする家庭生活などに起因することが大きいといわれています。
開祖さま、聖師さま、二代教主さまはじめ歴代教主・教主補さまは、一貫して土、火、水、空気のご恩に感謝をし、すべてのものを無駄にしないよう大切に活かしていくことや、自然力すべての開発利用、天下の大本(たいほん)としての農業の尊さ、あるいは心身ともに健康であるための正衣、正食、清居など、正しい生活のあり方についてたくさんのご教示を残され、お土やお松の偉大な効用についても繰り返しお示しくださっています。
現実的にはさまざまな問題が複雑にからみあい、一朝一夕に改善されることは困難でしょうが、愛善みずほ会の60年にわたる活動がさらに発展し、これまで以上にご神意にかなったものとならねばなりません。教団と愛善みずほ会が一体となって、人類愛善の大きな心で、食・農・環境問題の改善に良い型が出せますよう取り組んでまいりたいと存じます。
(後略)
(H20・2・3「大本節分大祭」ご挨拶より)
(前略)
かつて三代教主さま(愛善みずほ会二代総裁)は、日本の高度成長期に開発が進み、自然や田畑が荒らされていく様子をご覧になり、日本の自然の破壊とともに日本人の精神性や文化、そして人の心が荒廃していくことを大変憂いておられました。
また、四代教主さま(愛善みずほ会三代総裁)も同じように、世界の未来を憂いて、「脳死臓器移植や遺伝子組み換え、クローン技術の開発などは、自然環境の破壊と同様に大きな環境破壊です。これは、人間の傲慢(ごうまん)な思い上がりであり、神意(宇宙の意志)を忘れた〝科学の暴走〟というほかはないと思います」と述べられ、この科学の暴走を心から戒めるとともに、私たちの生命(いのち)を守り育ててくださる大地のご恩に感謝をささげ、神さまのご意志に従うまことの生き方に帰るようお示しになっています。
自然環境を侵すことも、生命の尊厳を侵すことも、すべて大地のご恩を忘れ、神さまのみ恵みの中で生かされていることを忘れてしまった人間の傲慢な思い上がりです。
大本開教以来、私たちが一貫してお教えいただいていますことは、お土のご恩ということです。私たち人間は、天のご恩はもちろんですが、お土のご恩をはなれては生きていけません。
二代教主さま(愛善みずほ会初代総裁)のお歌に、
人はみな土よりいでて土に生き土の恩うけ土にかくるる
いろいろの理くつをやめて土の恩かみしめてみよ神のありかを
とお示しいただいておりますように、私たちは無限の生命(いのち)を生み守り育て、すべてを抱擁し、浄化してくださるお土のご恩に感謝する暮らしを実践し、みんながお土の心になることこそ、神さまのご意志に従うまことの生き方であると思います。
ご神諭(大本神諭)に、
「お土から出来た物であれば、ドンナ物を喰(く)ても辛抱が出来るから、大根の株(めん)でも、尻尾(しりお)でも、赤葉でも、常から粗末にするで無いぞよと申して、毎度気を付けてあるぞよ。平生(つね)から心得の良いものは、最后(まさか)の時に能(よ)く判(わか)るぞよ。お土を大切に思う人は、神が天地から何時(いつ)も見届けて在るぞよ。天地の神から誠の神力を頂いて居(お)る人は、正勝(まさか)の時には、余り困りは致さぬぞよ」
とありますように、お土のご恩に感謝し、ものをまつべるという、開祖さまが御身をもってお諭しくださいました開教の原点に立ち返り、それぞれの信仰の初心に帰らせていただくことが、今、求められているように思います。
同時に、天産物自給自足にもとづく環境保全型農業を普及し、人口・食糧・環境問題の解決のため、愛善酵素農法による安全安心な作物づくりの普及や、教団のすすめる正食運動と連携した生産者と消費者をつなぐ「産直ネットワーク」の構築、「新たに農業につく人たちへの支援」や「農業体験の場の提供」などを推進するため、教団をあげて、「愛善みずほ会」「人類愛善会」や地方組織とも協力してまいりたく存じます。そして一人ひとりがお土の心となって、みろくのみ世の礎とならせていただきましょう。
(後略)
(H21・5・5「みろく大祭」ご挨拶より)
開教121年、癸巳(みずのとみ)の節分大祭おめでとうございます。
(中略)
「三千世界一度に開く梅の花、元の神代(かみよ)に立替え立直すぞよ、須弥仙山(しゅみせんざん)に腰をかけ、艮(うしとら)の金神守るぞよ」
大本は明治25年2月3日、節分の夜、国祖・国常立大神(くにとこたちのおおかみ)さまが、数千万年もの永い年月をご退隠された末に、出口なお開祖さまに帰神(かんがから)せ給い、全大宇宙、現幽神の三界の立替え立直しを大宣言され、神さまの大経綸(おおみしぐみ)のまにまに開かれた天啓のお道でございます。
大本の120年の歴史を振り返りますと、開祖さまにはじまり、聖師さま、二代教主さま、そして三代教主さま、尊師さま、四代教主さまから今日に継承されてまいりました神さまのご経綸は、法身(ほっしん)、応身(おうしん)、報身(ほうしん)とその時代時代で、潮(しお)のうねりのごとく、表面に現れる姿は異なって見えますが、その根底には末代変わらぬご神意が流れています。そのご神意とは、すべての人がこの世をお創りになった神さまのみこころを覚らせていただき、生きとし生けるすべてのものが幸せに暮らせる「みろくの世」をこの地上にうち建てることでございます。
私たちは、今一度、大本の歴史を正しく学ばせていただき、大本出現の真の意義と、現代を生きる私たち大本人としての使命をあらためて深く心に刻み、開教の精神に立ち帰り、121年目の第一歩を歩ませていただきたいと存じます。
節分大祭に引き続き執行されます大祓(おおはら)い神事では、天地をはじめ、世界中の国々や、国内、地域社会、一身一家にいたるまでのさまざまな災いが、国祖の大神さまのご神意のまにまに大難を小難に小難を無難に祓い浄(きよ)められますよう祈らせていただき、明日の明け方まで、皆さまとともに心してお仕えさせていただきましょう。
今日の節分は、大地の金神 金勝要(きんかつかね)の大神さまのご顕現であられる二代教主さまのご聖誕日でもございます。
きんかつわ ちきうのへそに たんだ(ざ)して もつれのいとお(を) とくど(ぞ)うれしき
この二代教主さまのお歌に示されていますように、大地の金神金勝要の大神さまのご分身ご分霊である五大洲(ごだいしゅう)の国魂(くにたま)神さまのお働きにより、糸のもつれを解くように、世界中の諸々(もろもろ)の蟠(わだかま)りや一触即発の危機が穏やかに解決されますよう、あわせてご祈願させていただきたく存じております。
また、二代教主さまはいたるところで、天地のご恩、特にお土の尊さ、ありがたさを私たちにお示しくださり、お土の心にならせていただくことが、いかに大切であるかを繰り返しお諭しくださっています。
かむながらお土の心になるならばこの世に不足ひとつだもなし
かむながらみたま磨くといふことは土地のこころになるをいふなり
「お土の心」になるということは、踏まれても、汚されても不足ひとついうわけでもなく、世人(よびと)の下にあって、すべてを支え、抱擁し、生み、育(はぐく)み、浄化していくお土の姿に神習(かんなら)わせていただき、自分自身のみたま磨きをするようにとのお示しであると存じます。
私たちは日々の生活の中で、祈ること、省みることを怠ると、われよしの心に陥りやすく、自分だけが正しいとの思いから、ともすると他を嫉(ねた)み、怒り、疑い、歎くなど、不平不満の心がわきあがってくるものです。二代教主さまは、そのような気持ちになりがちな私たちを、お土の心に照らして戒めておられるのではないかと思うのです。
これについては、三代教主さまが、私たち信徒に、わかりやすく具体的に述べられているお言葉がございますので、ここに引用させていただきます。
「日出麿先生(出口日出麿大本三代教主補)が、〈祈り為(な)せ 省みよ 悟れ〉とお書きになったお言葉は、端的に、わたくしたちの歩み方をお示しくださったもので、このお言葉をしるべに謙虚にねばり強く精進さしていただかなければとおもいます。中でも省みることは修練を要するものです。ものごとに消極的であり、またむやみと喜び、歎くことは、過度の自己愛によって魂をけがすにひとしいでしょう。こころに不満をもち怒りっぽく過ごすことは、しだいに神さまの愛を見失いやすくなります。他を批判したくなる目は己に向けなければなりません。自己を正しく見つめる人は、他との関係をも神さまにお任せして進むことができるでしょう。そこに、愛情のある理解も生まれ、お互いの和を育てることができましょう。
反省の資(もと)とすべきものは、さらに限りなくありましょう。けれども、わたくしたちは、何よりもまず真剣に求め行わなくてはなりません。この現実の世界は、全霊界の移写界であり、基礎ともなっています。天界の優美も精巧に移写され、また幽界のなやみも移写しています。一ゆれの風の動きにも、わたくしたちの心の向け方によって世界を異にしてきます。その故に、神さまの光を祈り求めて、懸命に歩ませていただかなくてはなりません」
とお示しくださっています。
お土の心とは、開祖さまの時代から120年の歴史の中で、一貫して変わらないみ教えの根本であり、大本の心、大本の歩みそのものでもあります。私たち一人ひとりがお土の心に神習い、「みろくの春」に一日も早く近づけますよう、神さまのお光を求めて真剣に祈りつつ、他を思いやり、自己に厳しく省みて、不足を思わず、常に笑顔と良い想念を持って、素直に、明るく、誠実に神さまのご用に一生懸命励ませていただきたいと存じます。
(後略)
(H25.2.3「 節分大祭」ご挨拶より)
あけましておめでとうございます。
会員の皆さまには平成28年丙申(ひのえさる)の新春をお健やかにお迎えのこととお慶(よろこ)び申し上げます。
愛善みずほ会は、戦後、日本国土が深刻な食糧難にみまわれる中、増収・増産のため1948(昭和23)年に出口すみこ初代総裁によって創立されました。その目的は、「農村に友愛協助の精神を普及すると共に持続可能な農業技術の研究・普及と安全な農作物の生産並びに食生活の改善をすすめ、もって農民生活の安定と我が国の食糧自給体制の確立に寄与すること」でございました。
その後、日本が高度成長期を迎え、国民の生活が豊かになりましたことは、誠にありがたいことでございますが、一方で経済優先に偏重するあまり、食糧難の体験はいつしか過去のものとなり、一粒のお米、一枚の菜の葉を「ありがたい」「もったいない」と思う心が失われつつあります。しかし、食は生命維持の根幹であり、私たち人間は、食物がなければ生きていくことができません。
そのような中、平成27年10月、TPP(環太平洋経済連携協定)が、米国を中心として加盟国間で大筋合意されました。今後、各国の批准採決が行われますが、この協定が承認されれば、さまざまな問題が生じることが予想されます。特に農業の分野において、7万トンのコメの輸入、農産物の関税が段階的に撤廃、日本で認められていない食品添加物の使用承認や残留農薬の規制緩和、ポストハーベスト(収穫後農薬使用)の野菜や果物の輸入、遺伝子組み換え食品が増大すること等により、日本全国の農業への影響や、農業人口の減少が懸念されるのみか、国民の生命を危険にさらすことになります。国民やその子孫が安心して健康で生き続けるためには、国内の農業及び農業政策の改善が急務であります。
出口直日二代総裁は、人間はある期間は何らかの方法で土に親しみ、農を体験させていただくことを自らの農体験を通して推奨され、出口聖子三代総裁は、食、農における安全性を厳しく諭されています。
日本には古来よりお土を大切にしてきた文化があり、人群万類すべてがお土の恩恵を受けて生かされている以上、一握りのお土に感謝をし、安心安全な農産物を生み出さなくてはなりません。そして、人間だけでなく、その他の動植物や微生物に至るまで、すべてのものが天地自然の摂理に従った方法で地域の活性化を目指し、さらに地域と地域のネットワークを広げていくことによって、真に国の経済も文化も立ち直っていくものと信ずるのでございます。
今後とも、愛善みずほ会の活動として、これらの諸問題の改善に寄与し、地域の後継者育成や農業従事者と消費者をつなぐネットワークの構築、自給自足体制の確立、安心安全な農産物生産の技術普及に向けて、より一層進展いたしますよう願ってやみません。
本年も会員の皆さまのご健康とご繁栄を心よりお祈り申し上げます。
さまざまと世はかわれどもかわらぬは月日と土のめぐみなりけり
(出口すみこ初代総裁詠)
(「みづほ日本」誌・平成28年1 月号より)
新年あけましておめでとうございます。
(前略)
さて、本年の干支、戊戌年は、お土に関係の深い年で、大本では、愛善みずほ会が今年の節分をもって、創立満70周年を迎えます。
顧みれば第二次世界大戦直後の、食糧難の時代に、この国の食糧自給と農村の繁栄を念願してこの会が発足し、増産運動に励む一方、「天地の恵みに感謝し、天産物自給をめざす」を基本精神として、自然の法則に叶(かな)う素直な土作り、自然環境や身体(からだ)にやさしい安全、安心な作物を作る愛善酵素農法の構築と、研鑽(けんさん)・普及活動などに努めてまいりました。
しかし、私たちの願いとはうらはらに、今日(こんにち)の日本は食糧の大半を海外に依存し、カロリーベースの食糧自給率は38%と先進国の中では最低の基準にあり、農業人口の減少、耕作放棄地の増加など多くの問題を抱えています。
また加速度的に進む地球温暖化による大規模な災害や環境汚染、TPPの推進、主要農作物種子法廃止などにより、遺伝子組み換え食品や農薬、化学物質汚染食品などが、私たちの暮らしや健康にどのような影響を与えるかと考えるとき、大きな不安を感じずにはいられません。
開祖さま(出口なお大本開祖)は開教当初より、一握りのお土の尊さを厳しくお諭しくださっていますが、この教はいつも大本の根幹にあります。
聖師さま(出口王仁三郎大本教祖)はお歌に
農業は日本国家の大本(たいほん)と遠き神代ゆ定まりてをり
と詠まれ、農業は日本の国の最も根本となるものとして、天産物自給の国家経済を説いておられます。
愛善みずほ会初代総裁である二代教主さまは、お土のご恩についての数多くのお歌をお詠みになり、私たちの日々の生活の中の幸せも、世界の平和も、どこか遠いところにあるものではなく、お土を敬い、お土に根づいた地道な暮らしの中に築かれるものであり、私たち一人ひとりの心の持ち方がいかに大切であるかを繰り返しお示しくださっています。
三代教主さま(愛善みずほ会二代総裁)は「農を中心にしていこそ、国の経済も文化も、本当に立(たち)直るものである」と述べられ、四代教主さま(愛善みずほ会三代総裁)も食、農における安全性や環境汚染など、常に現状を憂いておられました。
このように、教御祖さま方が身をもってお示しくださいましたみ教えをいただきながら、理想にはまだほど遠い現実に申し訳ないという思いとともに、日常の実践として、今まで以上に良い作物を作るために良いお土を作りたい、良い作物を作って神さまや信徒の皆さまに喜んでいただきたい、大本から良い農の型を出して日本に広めていきたい、という思いが心の底から沸き上がってくるのでございます。
皆さまにもどうかこの機会に、お土のこと、農のこと、食のことをもう一度、他人事でなくご自身のこととして、真剣に考えていただきたいと思うのでございます。
(後略)
平成30年元旦
(「大本」誌・H30.1月号より)