■お土は生きものの〝命の源〟
学説によりますと、生命の発生は38億年前とされ、土はそのころに出来たと推定されています。
土の原点(母岩)は岩石です。岩石が太陽の光や熱、風、空気、水、また生物が出す分泌物や酵素の働きなどによって徐々に風化していき、土が出来ています。つまり、岩が風化して石になり小石になり砂になり、さらに細砂・微砂と細かくなっていき、シルトという状態になって初めてマイナスの電気を帯電しモノを付着する作用が生まれ、粘土になっていきます。
この砂から粘土まで細かくなった中に、動植物の廃棄物や死殻が分解されて出来た腐植をはじめ水や空気が付着し、土壌生物や微生物が棲んで、植物が育つ環境(団粒構造の土)が形成されているわけです。
スプーン一杯(1g)の汚染されていない健康な土の中には、細菌(1,000万~1億)や放線菌(100万~1,000万)、糸状菌(10万~100万)、藍藻菌(100~1,000)など、実に多くの肉眼では見えない微生物(数億~100億)がいるといわれています。少し大きな生物(ミミズや多足類など)を加えると更に数は増え、土の中には1万種類ぐらいの生物がいて生態系を形成しています。
この生態系によって有機物(植物性廃棄物や動物性残渣など)が分解・合成され、それによって出来た養分が植物の栄養源となって供給されているのです。
このような土壌生態系のバランスのとれた〝お土〟が、植物を育てる力となっているわけです。間接的には、地上の動物を育てる力ともなっており、お土はあらゆる生きものの〝命の源〟と言われるゆえんです。
しかしながら、植物が育つ〝お土〟の部分=土壌は、地球の地表部分のわずか数センチメートルから数メートルの厚さしかありません。全地球を平均すると18cmの厚みしかないといわれています。地球上、土壌はヒトの皮膚のようなものとみなされ、このわずかな貴重な部分で、私たち人間をはじめ様々な生きものの生命が営まれているのです。
■完全発酵堆肥を使って
土壌中の生物を大別すると、有機物をエサとする腐生性生物と生きものに寄生して栄養をとる寄生性生物とに分けられます。寄生性生物の中には、植物の根に寄生して窒素を供給する根粒菌や、リン酸を供給する菌根菌のように植物と共生する微生物も存在しますが、ほとんどの寄生性生物は病原性を持っているといわれています。
このようなことから、土壌生態系は腐生性生物が多く寄生性生物が少ない状態がバランス良く、農作物が健全に育つ土となります。逆に寄生性生物の密度が高いと病気が出やすく、様々なトラブルが起こりやすい不健康な土ということになります。
戦後の日本農業は化学肥料に傾倒してきたために、土壌中に有機物が少なくなり、腐生性生物が死に絶えて種類が減ってきてしまっています。逆に病原性を持った微生物の密度が高くなり病虫害の多発につながっています。その対策として農薬を使うという悪循環が繰り返されているわけです。
私たちのいう〝お土づくり〟とは、土壌生態系を腐生性生物が多い状態にすることをいうわけですが、そのためには腐生性生物の栄養源である有機物を常に土に還していくことが必要だということです。
このような農業は、日本では戦前まで、先人たちによって延々と繰り返し営まれてきた農法(有機農法)なのですが、愛善みずほ会では、有機物を不完全発酵の状態で還元するのではなく、微生物の出す酵素のチカラを借りて完全発酵させて土に還すこと(愛善酵素農法)を奨励しています。
完全発酵堆肥を施すことによって土壌生態系が整えられるだけでなく、植物が健全に育つために必要な「光」「水」「空気」「温度」「養分」「有害物質の除去」といった条件や、土壌の保水性・排水性・通気性・保肥性を整える有効な手段ともなります。
愛善みずほ会では、そのような完全発酵堆肥を本格的につくり、疲弊した大地を元の微生物が豊富に生きる〝お土〟に改善していきたい、それを求める人たちに提供できるようにしていきたいと考えています。